概要
照明・配線器具などの開発・製造・販売を手がけるパナソニック エレクトリックワークス株式会社(以下、パナソニック エレクトリックワークス)は、「いい今日と いい未来を 電気設備から」というパーパスを掲げ、電気設備を起点にウェルビーイングやエネルギーマネジメントなどの新たな価値を創出し、事業を通じてサステナブルな社会づくりに貢献しています。
同社のコールセンターには、月間平均5万件の問い合わせが寄せられており、そこから得られるVoC(Voice of Customer:顧客の声)の活用は、ビジネス成長における重要なテーマの一つです。
そのVoCデータ活用の高度化に向け、DATUM STUDIOはこれまでコールセンターに蓄積された対話データを対象に、文字起こし・要約・個人情報のマスキングを実施し、CDP(Customer Data Platform) として活用しているSalesforceと連携するシステム開発を支援しました。安全かつ構造化された顧客データ活用を実現し、データドリブンな事業推進を支えています。
本記事では、その取り組みとプロセスについてご紹介します。
課題
これまでパナソニック エレクトリックワークスでは、AI音声認識による文字起こしツールを導入していましたが、文字起こしの精度に課題がありました。
加えて、VoCデータとAIを掛け合わせた施策によるカスタマーサクセスのさらなる高度化を検討する中で、以下の課題も顕在化していました。
- 顧客の問い合わせに含まれる文脈情報までVoCとして抽出できなければ、製品やサービスの改良に繋げることができない
- 個人情報を含む機密性が高いVoCデータを、セキュアかつ適切なインフラ環境にデプロイした上で、活用しなければならない
- 従来使用していた文字起こしツールの契約更新が迫っており、要件定義から実装までを3カ月という短期間で完遂しなければならない
こうした複数の課題を解決するため、同社では問い合わせデータ基盤の構築と音声データの活用に着手しました。
具体的な取り組み
まず、従来の文字起こしツールをリプレイスして高精度な文字起こしを実現するため、複数の文字起こしツールを比較検討しました。その結果、文字起こし性能の高さを評価し、 Google Cloud が提供する生成AIソリューション「Gemini」を採用しました。
次に、顧客対応の音声データに個人情報が含まれる点を踏まえ、同社グループのセキュリティ基準を満たすインフラ基盤を構築しました。そのうえで、音声データの文字起こし・要約・個人情報のマスキングを行うパイプラインを開発し、処理後のデータをSalesforceに自動連携する仕組みを整備しました。
あわせて、管理画面でパイプラインの稼働状況をリアルタイムに確認できるように実装しました。
さらに、月間平均5万件の音声データを安定的に処理するため、 Gemini のAPIにおける処理上限(Quota Limit)を考慮して設計しました。文字起こしの精度・処理速度・コストのバランスを重視し、複数のモデルを比較検討した結果、 Gemini 2.5 Flash を選定しました。バッチ処理を最適化することで、大規模データを安定して処理できる基盤を実現しています。

本プロジェクトの成果と今後の展望
本プロジェクトでは、従来の課題解決に加え、システムのリプレイスによりライセンスコストを70%以上削減することができました。
また、従来活用されていた文字起こしツールの契約満了というリミットがある中で、要件定義から実装までをスケジュール通りに完遂しました。
さらに、これまでボトルネックとなっていた音声データの文字起こしについて、Gemini 2.5 Flashの採用により認識精度を改善し、分析業務やデータドリブンな意思決定を支える水準を実現しました。
今後は、さらなるビジネス活用の高度化に向けて、以下の取り組みを検討しています。
- LLMOps(AIモデルの継続的な更新・運用管理)の導入・整備
- お客さまからの問い合わせ内容ごとに最適化された要約生成や、後処理情報入力の自動化により、コミュニケーターの業務負荷軽減を実現
これらの取り組みを通じて、お客さまからのお問い合わせデータの活用領域をさらに拡大し、顧客理解の高度化を目指していきます。
DATUM STUDIOのケイパビリティ
DATUM STUDIOは、データ基盤構築から生成AI活用まで一気通貫でサポートします。
本プロジェクトのように、個人情報や機密情報を含む大規模データを扱う基幹システムにおいて、セキュリティを担保したインフラ設計と生成AIの特性を踏まえたパイプライン構築の両立を実現する技術力を有しています。
お客さまの事業上の制約やタイムラインを深く理解し、要件定義から実装まで確実にやり遂げる推進力で、データ活用とDX推進をご支援します。
Google Cloud および Google Cloud 製品・サービス名称は Google LLC の商標です。






