パナソニック ホームズ株式会社 住宅関連事業における顧客データの利活用と
業務効率化を支援

事例

複数の事業を展開するパナソニック ホームズの顧客分析基盤構築に「Google Cloud 」を活用

建築請負、リフォーム、不動産売買・仲介、住宅システム部材の販売など、住宅にまつわる複数の事業を展開しているパナソニック ホームズ株式会社は、創業者 松下幸之助の想い「住まいは人が暮らしていくうえで最も大切なもの。それにふさわしい良い家をつくりたい。」という使命感を基に住まいづくりに取り組み、1963年の創業以来、お客さまの生涯にわたる大きな満足をお届けすることを目指しています。

同社は、長きにわたりお客さまとのご縁を紡いできた中で蓄積された膨大なデータを利活用して、お客さまにとっての最適なタイミングを見極めて適切なご提案をするべく、データ基盤CDP(※1)を Google Cloud で構築しました。

本記事では、パナソニック ホームズが Google Cloud を選択・活用した背景と、同社の課題解決を図るべく、DATUM STUDIOが支援させていただいた取り組みをご紹介します。

※1:Customer Data Platformの略称で、 顧客一人ひとりの属性データや行動データを収集・統合・分析するデータプラットフォーム

課題

パナソニック ホームズは住宅の引き渡し以降も丁寧なアフターサービスを提供しており、お客さまの家族構成や暮らし方が変わるターニングポイントにおいて、リフォームや建て替え、資産活用など、より豊かな生活をサポートするための提案を行っています。

しかし、同社はこれまで各事業ごとに特化した業務システムをオンプレミスで構築してきたため、各事業ごとに管理されるデータがサイロ化し、お客さまの情報を有効活用することができない課題を抱えていました。

この課題を解消するため、オンプレミスでのシステムを再構築するという選択肢もあったものの、お客さまに寄り添った提案を第一に考える同社として、スピーディーにビジネスを展開していく、という原点に立ち返り、課題解決に取り組むこととなりました。各事業ごとに異なるシステムで管理されたお客さまの情報と、お客さまがパナソニック ホームズのWebサイトYouTube チャンネルを閲覧する際に得られたデータを Google Cloud で統合・蓄積・分析し、お客さまにデータドリブンな提案を行えるデータ分析基盤を構築することを決定しました。

Google Cloud を採用した理由

数多あるDWH(※2)の中から同社が Google Cloud を採用した理由として、主に次の3点が挙げられます。

(1)環境構築における圧倒的なスピード

オンプレミス上で作り直すよりも圧倒的に速く、事業ごとに違うシステムに存在しているお客さまデータをいち早く統合し、利活用できます。

(2)必要最低限な投資でコストの最適化

オンプレミスでの運用と比較すると、設備投資が不要かつ従量課金制という料金体系であるため、コストを最小限に抑えることが可能です。

(3)スケーラビリティと信頼性

パナソニック ホームズとこれまでお付き合いがあった約十万人のお客さまのデータをセキュアに管理できる環境が必要であることに加え、同社では毎年数千棟の住宅の建築・引き渡しを行うため、今後もコンスタントにお客さまのデータが増えていきます。

Google Cloud であれば、都度データ領域を拡充する対応を必要としないため、拡張性のあるシステムを構築できるうえ、堅牢なインフラストラクチャとセキュリティ対策により、データの安全性を確保することが可能です。

※2:Data Ware Houseの略称で、複数のシステムからデータを集めて整理するデータベースのこと

プロジェクト全体のイメージ

Google Cloud を活用し、CDPをモダンデータスタックで構築する具体的な取り組み

(1)ご家族まで含めたお客さまデータのID統合と、基幹システムとの連携

パナソニック ホームズのように複数の事業ポートフォリオを持ってビジネスを推進されている企業においては、ID統合だけでも大変な作業であることは想像に難くありません。

統合にあたってはお客さま個々人のみならず、お客さまのご家族のデータをどのように紐づけていくかという視点を持ってデータを整備していくことが、本プロジェクトの一つの要でした。

そのような背景から、IDを統合する際のパターンや条件分岐は複雑であったため、名寄せ(※3)のロジックは BigQuery と相性が良いdbt™(※4)を用いて、処理の簡素化や脱・属人化を図りました。

そしてデータを分析する際には、お客さまのオンライン上での行動データと、同社で活用しているSFA(※5)などの基幹システムの情報を紐づけを行い、データを分析・利活用する点に注力しました。Google アナリティクス(以下、GA)と BigQuery であれば、シームレスな連携を実現できます。

住宅の購入はお客さまにとって一生に一度あるかないかという、とても貴重で高額な購買体験です。お客さま一人ひとりのご状況を精緻に把握するため、BigQuery にGAの情報を出して過去の商談データなどと紐づけ、分析したものをダッシュボード化することを実現しました。

(2)スピードとアジリティの高い意思決定を支援するダッシュボードの構築

Google Cloud のようなハイパフォーマンスなデータ基盤であっても、データアーキテクチャの汎用性が高くなければ、後々の開発負荷がかかってしまうため、標準的なモデルを構築しながらも最適なアーキテクチャを設計できるかに重きを置きました。

ここで解説するスピードとアジリティに関しては、BIツールの Looker でカバーする範囲を示します。BIツールの活用は、単純にダッシュボードやレポートを確認するだけ、という思考に陥ってしまいがちですが、Looker の特性を活かすことで業務効率化まで実現しました。

Looker 上で条件を設定し、リストから抽出した対象のお客さまに即座にメール配信できる機能を構築しました。単純にデータを可視化するだけのダッシュボードとしてのアプローチではなく、お客さまとより良い関係を築くために欠かせない業務を Looker に組み込むことで、いかに効率化していけるかを考慮しました。

(3)個人情報を取り扱う環境に耐えうるセキュリティ

昨今、GDPR(※6)の影響も手伝って、個人情報の取り扱いは喫緊の経営課題の一つです。

今回のプロジェクトにおいても、個人情報を管理する環境下のセキュリティやプライバシーポリシーに関する対応において、システムとして対処すべき課題を抽出し、クリアしました。

たとえば、パナソニック ホームズのお客さまから「個人情報を削除して欲しい」という依頼を受けた際には、データを物理的に削除する必要があります。DWHだけでなくCDPにおいても、個人情報が置かれたテーブルが複数存在しているケースは多いですが、対象のテーブルをすべて検索して削除処理を実行する必要があります。もちろんかなりの時間を要する処理となりますが、BigQuery はそうしたスキャン(※7)パフォーマンスがとても高いデータベースなので、このような要件にもスムーズかつ的確に対処することが可能です。

※3:データベースに重複して存在するデータを属性等をもとにして、同一人物や同一家族のデータとして一つにまとめること

※4:BigQuery などクラウド型DWHにおいてSQLを用いてデータフローにおける変換プロセスを構築するツール

※5:Sales Force Automationの略称で、営業支援システム

※6:General Data Protection Regulationの略称で、EU一般データ保護規則

※7:複数のシステムをすべてのデータ変更と同期させるために必要となる、データの複製とロードのためのテクノロジー

成果

本プロジェクトにおけるDXの実現によって得られた成果は、次の3点です。

(1)データドリブンなアプローチにより、お客さまとのコミュニケーションを最適化

お客さまの属性やオンライン上での行動データを通じてアクションすることに加え、お客さまとのやり取りなども BigQuery でデータを統合、Looker で可視化し、分析・利活用することが可能となりました。その結果、より一層お客さまにとっての最適なタイミングで、最適なご提案ができるようになりました。

(2)事業を横断した「統合顧客カルテ」による顧客理解の深化

お客さまのLTV(※8)に係る事業を複数展開しているパナソニック ホームズにおいて、各事業で持つお客さまの情報を「一人のお客さまデータ」として可視化するために作ったのが、統合顧客カルテです。

(3)お客さまのライフステージをより有益なものにするソリューションの実現

新たにご家族が増えるケースやお子さまの独立、不動産の継承といったお客さまのライフステージの変化を把握し、1st Party Dataを十分に活用する分析基盤を構築したことで、新たなご提案を機会損失することなく行うことが可能となりました。

※8:Life Time Valueの略称で、顧客生涯価値と訳される。一人の顧客が企業と取り引きを開始してから終了するまでの期間内にどれだけの利益をもたらすかを試算したもの

Google Cloud、Google アナリティクス、BigQuery、および Looker は、Google LLC の商標です。

PARTNER

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SERVICE

AI文章自動校正サービス

DATUM STUDIOが独自開発したAI文章自動校正ツールは、時系列データに特化した深層学習アルゴリズムであるLSTM(Long Short Term Memory)に学習させる新しいタイプのAI校正ツールです。
汎用的な文章だけでなく、業界やサービスに特有な表現にも対応し、自動化により作業時間の大幅な短縮を実現します。

AI Manufacturing

DATUM STUDIOは最新の機械学習の知見より、熟練工が持つ「暗黙知」をセンサーや動画・画像などからデータ化し、深層学習(Deep Learning)を活用することで、"匠の技術”を継承し、進化させることが可能です。

DATUM STUDIO
レコメンドエンジン

顧客の嗜好の多様化により、市場のトレンドを把握するだけでなく、顧客一人一人を「個」として捉えた顧客管理と分析が重要です。DATUM STUDIO レコメンドエンジンは、顧客のインサイトを捉えることで、最適なタイミングでレコメンドを行い、新たな顧客体験を提供します。

Location Trends

SupershipグループであるDATUM STUDIOは、auスマートフォンの位置情報ビッグデータを活用した商圏分析を提供します。高精度な位置情報と正確なユーザーの属性を分析することにより、観光・商圏・交通における本質的なビッグデータ活用を実現します。

MLOps

機械学習を組み込んだシステムの開発や運用において、学習データに異常なデータが投入された場合の検知や自動的にデータを再学習する仕組みの構築など、運用上の課題が生じます。DATUM STUDIOでは、お客様のビジネス運用上で機械学習が安定的に稼働し、事業成長に貢献できる仕組みを提供いたします。

Analytics サービス

ビジネスのデジタル化やIoTの普及によりビジネスにおけるデータの取扱量は急激に増加しています。DATUM STUDIOのデータサイエンティストが、インサイトを導き出す最適なデータ活用の推進を支援いたします。

R&D 支援サービス

最新の論文をもとに、お客様のR&Dにおける最先端研究を支援いたします。

お問い合わせ

100名を超すデータサイエンティスト/エンジニアが所属
業種・業界を問わず多数の実績

DATUM STUDIOには100名以上のデータサイエンティスト/エンジニアが所属しており、AIを活用し業種・業界を問わず多数の企業の経営課題を解決した実績がございます。お客さまのビジネスゴール達成に向け、課題抽出から最適なデータ活用のプランニング、概念実証(PoC)、インフラ構築、AIモデル構築、継続的インテグレーション(CI)、継続的デリバリー(CD)、継続的トレーニング(CT)までご要望に応じて柔軟に対応いたします。

100名を超すデータサイエンティスト/エンジニアが所属業種・業界を問わず多数の実績