株式会社radiko Google Cloud でデータ分析基盤を刷新
コスト最適化と処理高速化を実現

事例

スマートフォン、パソコン、スマートスピーカーなどのデバイスを通じて全国のラジオ放送を配信し、ユーザーの聴取データを活用したターゲティング型デジタル広告事業を展開する株式会社radiko(以下、radiko)では、コストの最適化とワークフローの改善による業務効率化を目的に既存DMP(※1)から Google Cloud へ移行し、データ分析基盤を構築しました。

本記事では、radikoが抱えていた課題と Google Cloud へマイグレーションした背景、構築時の工夫や導入後の効果について、プロジェクトを推進されたradiko テクノロジー推進室 データ統括チーム リーダーの長谷川さまとプロジェクトを支援したDATUM STUDIOのデータエンジニアである信末の対談形式でご紹介します。

※1_Data Management Platform:ユーザー行動データを集約・分析し広告配信やマーケティングに活用するプラットフォーム

スピーカー紹介

課題と Google Cloud 導入の背景

長谷川さま:radikoで長年活用してきたDMPはデータ量の増加に伴いログ集計のワークフローが複雑化し、処理の遅延やコストの肥大化が大きな課題となっていました。
その課題解決のため複数のクラウド型DWHを候補に挙げて比較検証することになり、そのタイミングでDATUM STUDIOさんにご相談しました。

信末:2023年の秋頃から約3カ月間かけて聴取ログ(※2)を扱う処理環境の比較検証を実施しました。
従来のDMPと比較検証用に新たに構築した複数のクラウド型DWHの環境で、技術的課題や性能・コストの違いを整理しました。パフォーマンス面では従来と比べてどのDWHも大幅に処理時間を短縮することに成功したので、DMPから新しいクラウド型DWHへマイグレーションする方向で検討を進めました。

※2_ユーザーがラジオを1分聴くごとに1レコードが生成され、デバイス・番組・放送局・ユーザーIDなどの情報が記録されるもの。ユーザー自身で削除することが可能。

Google Cloud 導入の決め手

長谷川さま:複数の候補の中から最終的に Google Cloud に決定しました。決め手となったポイントが3点あります。

AI・機械学習の活用
(将来性)
既存基盤との親和性
(信頼性)
良好なコストパフォーマンス
(経済性)
Google Cloud が提供する機械学習・AI統合型のプラットフォーム「 Vertex AI 」などを活用することで、広告配信セグメントの精度向上やアプリの新機能開発につながる期待が持てる既存のアプリ開発基盤において Google Cloud を既に活用していたため、社内のエンジニアが知見を持っておりスムーズに連携・コミュニケーションを図ることが可能他のクラウド型DWHとの比較では大差はなかったものの、既存DMPと比較すると大幅なコスト削減が見込める

システム概要図

Google Cloud 導入後の成果

長谷川さま:実際に Google Cloud にマイグレーションしたことでデータ処理費用を54%削減できた点は、最も明瞭な成果として社内でも高く評価されています。
加えて、データの処理・転送時間も大幅に短縮されました。毎日連携先の企業にデータを共有するのですが、以前は約6~7時間かかっていた送信時間が1〜2時間で完了するようになりワークフローの運用も効率化されました。

信末:約5時間も短縮でき、全体のワークフローも処理速度が2倍以上になるという大きな成果を創出しました。その分、新しいことにチャレンジする余白も生まれたのではないでしょうか。

長谷川さま:はい。各放送局さまからも「早くデータが届くようになって活用しやすい」と好評をいただいています。

マイグレーションにおける工夫と技術面での挑戦

プロジェクトマネジメント面での課題

長谷川さま:既存DMPが独自の関数を多用していたため、処理の書き換えに大きな工数がかかりました。
また、運用に複数のベンダーが関わっていたこともあり、誰がどんな目的でワークフローを作ったのか一つずつ確認・整理する必要がありました。作業の重複も多く、DATUM STUDIOさんにその整理を支援いただきました。
移行のタイミングで現状の棚卸や一貫性を持たせるための前処理に苦労しましたが、その過程で重複や無駄なクエリを整理できたことで、結果的にコスト面でも大幅に改善しました。

信末:お話のとおり、まずはテーブル一覧を作り「どのデータがどう入力されているか」「どんな処理が施されているか」を徹底的に整理するところから始めました。radikoさま側でも内部調査を進めていただき、相互連携しながら円滑に進めることができました。

また、ログデータは非常に大規模で既存DMPには2019年以降のデータが蓄積されていました。過去データも実際に業務で活用されていたため、それらを BigQuery に移行する際は既存DMPの独自関数で処理した結果と BigQuery 上の処理結果が一致するかどうかを検証できる環境を構築しました。効率的に検証できる環境を整備したことが、奏功した大きなポイントだったと思います。

コスト最適化への取り組み

信末:今回のマイグレーションにおいては、コスト最適化がテーマの一つでした。既存DMPから Google Cloud に移行するにあたり、 BigQuery のパフォーマンスを維持しながら如何にコストを抑えられるかを重視して進めました。

長谷川さま:従来のDMPは定額制だったため、重いクエリを実行してもコストに影響しませんでした。しかし Google Cloud は従量課金制のため、従来と同じ処理方法で全テーブルをスキャンしてしまうとかえってコストが膨らんでしまいます。そこで、 BigQuery のパーティション分割やクラスタリングキーを活用して処理効率を高め、結果的に大幅なコスト削減に成功しました。

信末:加えて、 Google Cloud Storage のライフサイクルルールを設定することで不要なデータを自動的に整理する仕組みを導入しました。これによりストレージ費用の抑制も実現しました。

マイグレーションで実現したビジネス価値向上と業務効率化

広告主のニーズに応えるフレッシュなセグメントを提供

信末:radikoさまが社内で運用する広告配信用セグメント「Adセグメント」では、ユーザーの性別・年代といった属性データに加え、 BigQuery ML (※3)の機械学習を活用し、ユーザーの特徴に基づく拡張セグメントも生成しています。従来のDMPと比較するとより高精度で柔軟なセグメント作成が可能になりました。

長谷川さま:Adセグメントを活用して広告配信のセグメントサーバーやアプリ側の基盤へデータを連携し、広告配信の最適化を図っています。

信末:処理速度の向上も大きな効果でしたね。以前は約300種類あるセグメントの配信やレコメンド結果をアプリへ反映する際、DMPからアドサーバーへのデータ連携に翌日まで時間を要していました。現在は1~1.5時間で処理が完了し、ほぼリアルタイムでセグメントデータを最新化できます。これにより、アプリ内でユーザーに適したレコメンドを素早く届けられるようになりました。

長谷川さま:これには本当に驚きました。以前も属性データは毎日更新できていましたが、それ以外のセグメントは処理が追いつかず週1回の更新が限界でした。今回すべてのセグメントを毎日更新できるようになったことで「男性・30代・〇〇が好き」といった細かなセグメントも提供でき、広告主のニーズに応じたフレッシュなデータ活用が可能になりました。

※3_ BigQuery 上で利用できる機械学習モデルの略称。ユーザー特徴に基づくセグメント拡張などに活用

Looker を活用したデータ分析の取り組み

長谷川さま:radikoではBIツールの Looker を次の用途で活用しています。

1.社内向けダッシュボードとして活用

たとえば「最新の都道府県別聴取ユニークユーザー数を知りたい」といった、社内でも頻繁に寄せられる質問にすぐ回答できるよう、 Looker 上に常時更新される簡易的なダッシュボードを整備しています。
従来はこうした問い合わせに対しデータ統括チームが都度クエリを書いていましたが、担当者によって参照テーブルやクエリ内容が異なり、数値に差異が生じることもありました。また、テーブル数が多いことから「どのテーブルを参照すべきか」という判断が属人化していたことも課題でした。
Looker を導入したことでデータ構造や参照先が可視化され、社内はもちろんのことDATUM STUDIOさんとの間でも共通認識を持って一貫したデータ活用が可能になりました。

2.加盟放送局さま向けにダッシュボードを提供

現在、radikoに加盟いただいている放送局さまには「radiko viewer」というダッシュボードを提供しています。基本的な分析はそちらで行えますが、より詳細な分析を希望される放送局さまには、Looker を使った深掘りダッシュボードも個別に提供しています。これらのデータは、地上波ラジオやradikoの広告枠販売にご活用いただいています。

未来に向けたデータ活用と展望

長谷川さま: Google Cloud の導入によりデータ基盤の整備からダッシュボードの活用、広告配信の高度化まで、当社のデータ利活用は着実に広がっています。さらに活用を推進するべく、将来的にはクエリを書かずとも自然言語の入力だけですぐに結果が返ってくる環境を実現したいと考えています。現時点ではまだ途中段階ですが、その基盤となる前処理やデータ整備についてDATUM STUDIOさんと連携しながら進めたいと思っています。

また、radikoは2025年12月1日に創設15周年を迎えました。これまで掲げてきた「音声コンテンツを安全に届け、難聴取エリアを補完する」という役割に加え、これからは「多様な音声コンテンツとの出会いと楽しさを提供する」という、新たなフェーズに突入していると実感しています。
こうした変化に合わせデータを活用しながら、よりパーソナライズされた体験や思わず聴いてみたくなるコンテンツとの出会いを提供していきたいと考えています。

DATUM STUDIOのケイパビリティ

radiko様のプロジェクトではPoCの段階から伴走し、マイグレーション後も技術支援や運用・保守を行いながら、データ処理の最適化やクエリ設計の改善をご支援しました。

DATUM STUDIO では BigQuery ・ Looker ・ Vertex AI ・ Gemini など、 Google Cloud のソリューションに精通したエキスパートがクライアントの経営課題を的確に捉え、最適なテクノロジー選定とアーキテクチャを設計・構築を通じて、安定したデータ活用を実現します。

今後も先進的かつ確実な技術設計と実装で、クライアントのデータ活用とDX推進をサポートしてまいります。

※ Google Cloud および Google Cloud 製品・サービス名称は Google LLC の商標です。

100名を超すデータサイエンティスト/エンジニアが所属
業種・業界を問わず多数の実績

DATUM STUDIOには100名以上のデータサイエンティスト/エンジニアが所属しており、AIを活用し業種・業界を問わず多数の企業の経営課題を解決した実績がございます。お客さまのビジネスゴール達成に向け、課題抽出から最適なデータ活用のプランニング、概念実証(PoC)、インフラ構築、AIモデル構築、継続的インテグレーション(CI)、継続的デリバリー(CD)、継続的トレーニング(CT)までご要望に応じて柔軟に対応いたします。

100名を超すデータサイエンティスト/エンジニアが所属業種・業界を問わず多数の実績