データ分析人工知能機械学習需要予測 

需要予測の必要性とよく使われる手法について

今回の記事では、需要予測でよく使われる各種の予測手法についてご紹介します。

需要予測とは

需要予測の基本的な考え方について、前回の記事でご紹介しています。
前回の記事はこちら:「需要予測とは 〜活用シーンとAI(人工知能)システムの課題〜」

需要予測に関する記事はこちら
「マーケティングにおける需要予測の活用ケース」

需要予測の必要性

需要予測の本質的な目的は、「消費者(市場)が製品・サービスを必要とするタイミング・量を予測し、適切に供給する」事にあります。需要に見合う販売・生産計画の立案、過剰在庫を避け最適需要を見極めたい等、需要予測は企業でマーケティング計画を立案し、業務効率化の達成に寄与する目的でも活用されます。

需要予測を現場担当者や専門家の主観的な判断のみに寄る場合、予測の再現性や属人化の懸念が生じ、予測業務の担当者負担増、時間当たりの業務コスト増となる傾向にあります。データドリブンにビジネス課題解決に向けてデータ分析を取り入れて需要予測を行う体制は、業務効率化を進める上で有力な選択肢となります。

担当者の主観に捉われないより客観的なデータの収集、BIツールによる可視化出力の迅速な社内共有に加え、AIによる需要予測モデルの導入で、AIモデルによる予測値と実績値間の比較と乖離を把握することが可能です。

この乖離の原因を追求する上で、主観的判断の需要予測だけに寄らず、データによる現状理解、予測と実績の乖離把握、現状課題と問題点の抽出・分析、対応策の立案と施策実施に加え、必要なプロセス改善へフィードバックするPDCAサイクル運用により、ビジネスチャンスを逃さず、迅速でより低コストの業務プロセス作りに、AI機械学習ソリューションが貢献している事例が数多く見られるようになりました。

では需要予測を行う代表的な手法としては、どんなものがあるのでしょうか?以下にまとめてみました。

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需要予測の4つの手法

需要予測の手法①主観的な判断方法

企業内の各部門担当者や専門家のもてる情報・意見を集約して需要予測を行う方法です。代表的なものには陪審法、デルファイ法などがあります。

陪審法は、社内責任者や担当者間の討論による予測です。社内コンセンサスを得やすい反面、強い主張や意見に引きずられやすい傾向があります。一方、デルファイ法は各担当メンバーが個別に出した予測値の平均を採用するため、各部門の意見を反映しやすいですが取りまとめと確認に時間を要するという傾向があります。

需要予測の手法②市場調査の活用

需要予測は商品コンセプト、試作品、商品化などの市場投入プロセスの各段階でも行えます。商品化前のテストマーケティングにおいて、ターゲット対象の市場調査で新製品の長期的な需要予測を行う「ASSESSOR」モデルは以下のような流れで予測を行います。

1.新製品ターゲットへのアンケート調査で、既存製品評価の質問、既存と新製品の広告比較実施
2.模擬店舗でのターゲット商品購入と自宅でのHUT(ホームユーステスト)を実施
3.トライアル-リピートとブランド選好モデルからブランドシェアを予測し販売量導出

市場調査を使う需要予測は、調査企画、実査、集計までの期間が比較的長くなり、予算と費用対効果も兼ね合わせた上で実施検討が必要です。

需要予測の手法③時系列分析

時間の経過と共に変化する観測値データの系列を時系列と呼びます。需要予測では、需要の時間的変動を捉え、法則性を見つける分析として実施します。時系列データによる予測の効果は、短期的なものになります。過去データで得られた傾向が、長期でも変動しない保証がないからです。そのため短期で予測モデルの見直し・改善の運用が必要となります。

– 直線や曲線の当てはめ手法


時系列データのトレンド傾向を簡易的に確認するため、時系列データに直線や曲線の予測モデル式を当てはめることが可能で、一般的な表計算ソフトにも組み込まれています。当てはめのアルゴリズムは、最小二乗法、スプライン関数、フーリエ級数などがあります。1次関数の直線、曲線は2次以上、指数、対数、成長曲線など複数あり、当てはめ精度を複数モデル間で比較し、予測モデルを選ぶことも可能です。

– 自己回帰モデル


過去のある時間の観測値が、将来の観測値へと影響する前提を入れた時系列モデルです。1変量では自己回帰モデル(AR)、自己回帰移動平均モデル(ARMA)、自己回帰話分移動平均モデル(ARIMA)などがあり、多変量の時系列モデルにはベクトル自己回帰モデル(VAR)があります。

– 状態空間モデル


汎用的に時系列分析の枠組みを包括するモデルです。例えば、売上を観測データとして予測する際、把握が難しい長期的トレンドを「状態」として仮定した需要予測モデルを構築できます。トレンド成分への分解と長期時系列でより精緻かつ柔軟に需要予測モデルを構築した事例を以下にてご紹介します。

状態空間モデルの記事についてはこちら

需要予測の手法④機械学習(Machine Learning)

企業は詳細なユーザー行動のデータをビックデータとして保持し、意思決定のため活用する時代となっています。ビックデータでも、効率的に短時間で予測結果の出力が可能な機械学習アルゴリズムの開発が盛んです。

需要予測のモデル構築では、教師あり機械学習手法が使われます。教師データ(売上や販売量などの被説明変数)に対して様々影響する複数の要因(広告量などの説明変数)との関係をモデル化できます。経済学的な因果関係を盛り込む計量経済学モデル、ORなどの在庫管理手法などのフレームを取り入れた最適発注モデルなどにおいて、機械学習アルゴリズムを活用した、需要予測モデルの構築が可能です。

需要予測で使う教師あり機械学習には、様々な種類のアルゴリズムがあります。

– 回帰分析や決定木といった統計解析由来の手法
– 機械学習手法:ビックデータを対象とした分析処理技術
 – アンサンブル学習:複数のモデルを組み合わせて予測モデルを構築
– バギング:教師ありデータセットから複数のモデル学習用データをサンプリング、複数のモデルを統合・組合せて精度向上を図る手法
– ランダムフォレスト:教師ありデータセットから変数をランダムサンプリング、複数のモデルを統合・組み合わせ平均したモデルを構築
– ブースティング:教師ありデータセットで学習を行い、学習結果を踏まえて逐次モデルの重み調整を繰り返して出した複数モデルの結果を統合・組合せ。XGBoostやLightGBMなどより高速のアルゴリズムの開発がなされている
 – 深層学習(Deep Learning):Recurrent Neural Network(RNN)は深層学習(Deep Learning)で時系列データを取り扱い可能で、その中でLong Short-term Memory(LSTM)は人間の短期・長期記憶のメカニズムをRNNに組み込んだもので需要予測にも応用可

機械学習の進歩により、例えば深層学習(Deep Learning)のRecurrent Neural Network(RNN)は、時系列データの周期やトレンドの自動学習でモデル構築可能です。市場に関する知見や知識無しでもモデリングできるため、予測モデルを構築する時間や費用は削減しやすくなります。

機械学習の予測でもう1つ注意を払う点に、モデルの過学習があります。教師ありデータで構築した予測モデルの推定誤差が小さく最適モデルだと一旦判断しても、過去のデータ傾向の学習し過ぎで、未知データでの誤差(汎化誤差)が上昇することがあります。過学習は機械学習モデルのパラメータ調整や、訓練データの追加などで回避できる可能性があります。

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DATUM STUDIOが実現する需要予測

需要予測には様々な手法があり、一長一短ある特徴を踏まえた手法選択が必要です。需要予測モデル導入の目的に適った運用体制を予測手法の特徴を踏まえた上で、適正な予算と期間内での構築ご支援を、AI機械学習ソリューションを中心にDATUM STUDIOとしてご提供いたします。

機械学習アルゴリズムは高度化し、より高速なアルゴリズム開発が進み普及する一方で、複雑化、ブラックボックス化しており、予測精度は高いながらも出力の読み取りや算出過程の理解が難しい手法も多くなっています。

一方で企業のマーケティング実務では、4P(Price, Place, Promotion, Place)に代表される個別戦略の新製品の売上への需要へのインパクト、次期施策の予測シナリオとして各戦略にどの程度重きを置き、戦略同士の相関、相互作用にも目配りしながら、戦略の組合わせ、マーケティングミックス最適化の追求が必要です。

現場のマーケティング担当者は市場についての知識を持ち、モデルは予測内容が説明可能で、モデル出力の根拠もわかりやすく説明できる必要があります。そのような説明可能な人工知能(Explinable AI)も含めて、予測精度の追求に留まらない、最適なソリューションのご提案、ご提供をいたします。

 

需要予測についてまとめ

本稿では、需要予測でよく使われる予測手法についてご紹介しました。

需要予測については、予測モデルに頼るだけでなく、様々な情報を主体的に集め、計画を立案し、その後の実績と予測の乖離を把握し、乖離が生じた原因にアプローチすることで、必要な改善点や将来の施策案などを見出すきっかけとなり、業績自体の改善にもつながる可能性があります。

DATUM STUDIOは、AI機械学習ソリューションを需要予測の領域でご活用いただくにあたり、需要予測のPoC(概念実証)段階から、予測のためのデータ取得、予測モデルの構築、その運用や活用に対するサポート、コンサルティングサービスをご提供いたします。

お困り事やご相談がございましたら、 下記の問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

参考文献:
古川一郎, 守口剛, 阿部誠(2011) “マーケティング・サイエンス入門〔新版〕” 有斐閣
Rサポーターズ(2017) “パーフェクトR” 技術評論社 
金明哲(2017) “Rによるデータサイエンス(第2版)” 森北出版
沖本竜義(2010) “経済・ファイナンスデータの計量時系列分析” 朝倉書店
馬場真哉(2018) “時系列分析と状態空間モデルの基礎 RとStanで学ぶ理論と実装” プレアデス出版

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