課題:高齢者の健康増進及び安全安心の確保とQOL(※1)向上
インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる人と利用できない人の間に生じる情報格差は『デジタルデバイド』と呼ばれ、デジタル社会において重大な問題となっています。
渋谷区では65歳以上の高齢者43,000人のうち、4人に1人がスマートフォン未所有(※2)という状況でした。
2019年に発生した台風19号で警戒レベル4の「避難勧告」が発令された際には、渋谷区が開設した避難所に訪れた高齢者は10%に満たず、災害時において高齢者が最新情報を入手することが困難であることを露呈しました。
また、新型コロナウイルス感染拡大以降に確立された「新しい生活様式」においては、対面での交流だけでなく、スマートフォンなどのデバイスを利用して手軽にコミュニケーションが図れることはQOLを高める大きな要素となるため、高齢者のデジタルデバイドの解消は渋谷区にとって重要な課題の一つとなっていました。
※1_Quality of Life『生活の質』
※2_令和2年度渋谷区区民意識調査からの推計値
取り組み:公的機関におけるセキュアなデータ分析基盤の構築
こうした背景を受けて、渋谷区では高齢者へのスマートフォンの貸与や、活用の支援を行う大規模な実証事業に取り組みました。アプリを通して対象者とコミュニケーションを図りながら、EBPM(※3)を行うためにデータを収集・分析し、効果検証に基づき施策の実施に取り組んできました。
このプロジェクトにおいて、DATUM STUDIOはKDDI株式会社とともにデジタルデバイドの解消に向けて、端末及びアプリケーションの非活用者を特定するデータ分析基盤の構築と運用を担っています。
このシステム開発では、対象者の情報を取り扱う上で高度なセキュリティ対策とデータ管理が求められますが、KDDIが認定したAWSのソリューションとクラウドDWHのSnowflakeを活用することで、セキュアなシステムを構築しました。
また本プロジェクトは、DevOpsにより開発から運用までのプロセスを自動化し、迅速かつ効率的な開発と運用を実現しています。これはDATUM STUDIOの豊富な知見によりCI/CD(※4)パイプラインを構築することで、本番デプロイする前にテストを実施することで障害を軽減し、高い品質を保つことができています。
さらに自動でデータを匿名化するシステムを組み込むことで、個人情報の取り扱いのリスクがない環境でデータ活用ができるものとなっています。
※3_EBPM_エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。 証拠に基づく政策立案。
※4_CI/CD_Continuous Integration(CI)とContinuous Delivery(CD)の略称。アプリケーションの開発からリリースまでのプロセスを自動化する手法。
成果:システムのトラブルなく、高齢者のデジタルデバイド解消率を大幅に改善
約1,400名の高齢者を対象とした実証事業は、世界的にも例を見ない大規模なもので、2021年開始から現在(2023年8月時点)に至るまで、システムトラブルを発生させることなく安定した運用を実現できています。
またこの実証事業を通して、約6割強の事業参加者がスマートフォンの基本操作を習得し、アプリの活用やコミュニケーションツールとして習慣的に利用することができるようになっており、デジタルデバイドの解消に寄与しています(※5)。
※5_渋谷区高齢者デジタルデバイド解消事業~中間レポート(事業開始1年目の効果検証)~(高齢者デジタルデバイド解消事業 | 高齢者デジタルデバイド解消事業 | 渋谷区ポータル (city.shibuya.tokyo.jp))