Snowflake Summit 2025 最速レポート最終日②
-セッション解説 Siemensグループに学ぶ、Snowflakeで実現するマルチクラウド/マルチリージョン データ共有アーキテクチャ編-

DATUM STUDIOの西川です。
現在サンフランシスコで開催中の「Snowflake Summit 2025」Day4(最終日)のセッション内容をご紹介します!
目次
はじめに:なぜ「マルチクラウド/マルチリージョン対応」が必要なのか?
企業のグローバル化が進む中、複数のクラウド(AWS・Azureなど)や地域(EU・北米・アジアなど)にまたがるデータ共有は、法規制・ガバナンス・コストの観点からますます複雑になっています。
そんな中、Siemens(シーメンス)はSnowflakeのネイティブ機能だけを活用して、マルチクラウドなデータ共有を成功させました。
本記事の要点まとめ
- ・Snowflakeのネイティブ機能だけで、AWSからAzureへデータを共有
- ・「Private Listing」+「Dynamic Tables」により中間アカウントを不要化
- ・700TBのデータ、10Mクエリ/日、100Kユーザーを支える大規模運用
- ・CDCもDynamic Tablesで自動化、データ品質も改善
- ・この構成は、マルチクラウドだけでなくマルチリージョンにも応用可能
Siemens社・Siemens Financial Services社の状況
データ基盤における取り組み
Siemensは全社で利用されている統一データ&AIプラットフォーム(Siemens Data Cloud:SDC)を持っており、次のような特徴があります。
- ・Snowflake + dbt™をメインに、Power BI 、Tableau、Qlikなどを利用
- ・AIサービス(SiemensGPT、AI attack)やデータ製品ハブ、マーケットプレイスを備える
- ・100以上のデータソースが接続され、日々10Mクエリ/2TBのデータ取り込みが実行されている


Siemens Financial Services(SFS)の概要・データ要件
- ・Siemens Financial Servicesの概要
- ・Siemensグループ全体および外部顧客に対して、資金調達・ファイナンスソリューションを提供
- ・世界60ヵ国以上・278,000以上の顧客に向けて、ファイナンスサービスを展開
- ・データ要件
- ・特にERPデータ(会計・財務)の共有が重要
- ・Siemens社とは別でAzure上に独立したSnowflakeアカウントを持っている


【旧アーキテクチャ】中間アカウントを経由した複雑なレプリケーション
旧構成では、AWS上のSDC → 中間AWSアカウント → AzureのSDP という3段階構成で、データを共有していました。
- ・Secure Viewの制約でレプリケーション対象にならず、物理テーブル化が必要
- ・ストアドプロシージャ+タスクで独自のデルタ処理を実装
- ・保守性・運用コストが高かった

【新アーキテクチャ】Private Listing × Dynamic Tables でシンプルに
新構成では、Private Listingを使って直接Azure側のSnowflakeアカウントとデータを共有。中間アカウントが不要となり、アーキテクチャが大幅に簡素化されました。
- ・Dynamic Tablesにより、CDCを自動化
- ・ビューではなく物理テーブルで提供 → Private Listing要件をクリア
- ・Siemens Financial Services専用のPrivate Listingを用意することで、アクセス制御も容易に

新アーキテクチャのメリット
- 1.中間アカウント不要化 → 運用工数とコスト削減を削減し、より付加価値の高い業務へ
- 2.CDC処理の自動化 → Dynamic Tablesによって抽象化
- 3.アクセス管理が簡素に → Private Listingによる限定共有
- 4.データ品質が保証されるようになった

まとめ:マルチクラウドだけでなくマルチリージョンにも
SnowflakeのPrivate Listingの機能は、クラウド間(AWS ↔ Azure)だけでなく、同一クラウド内のリージョン間共有(例:AWS東京 ↔ USオレゴンなど)にも利用可能です。
Siemensのように、法規制の対応や事業部門ごとの分離が必要なグローバル企業には最適なアーキテクチャだと感じました。本事例は、Snowflakeを活用して「グローバル×分散型×ガバナンス重視」のデータプラットフォームを実現した好例です。特に複雑な仕組みをネイティブ機能でシンプルに置き換える工夫は、多くの企業にとってヒントとなるでしょう。
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